「好きなピラティスを仕事にしたい」「人の身体を変える仕事がしたい」——そんな思いから、ピラティスインストラクターという職業に興味を持つ方が増えています。
しかし、いざ目指そうとすると「資格は何を取ればいい?」「未経験でもなれる?」「実際、食べていける?」など、分からないことだらけではないでしょうか。
この記事では、ピラティスインストラクターの仕事内容から、資格の取り方、年収のリアル、後悔しないためのキャリアの作り方まで、これからインストラクターを目指す方に必要な情報を網羅的に解説します。
- ピラティスインストラクターの仕事内容と向いている人の特徴
- 未経験からインストラクターになるまでの具体的なステップ
- 正社員・フリーランス別の年収相場と収入アップの方法
- 「辞めたい」と思う理由と、それでも続ける人のやりがい
- 就職・転職を成功させるためのポイント
ピラティスインストラクターとはどんな仕事?
ピラティスインストラクターとは、ピラティスのレッスンを通じて、お客様の身体づくりや健康維持をサポートする仕事です。ただし、仕事の範囲はレッスン指導だけにとどまりません。
レッスン指導だけじゃない「スタジオ運営・集客」の業務
インストラクターの主な業務は、もちろんレッスンの指導です。グループレッスンやプライベートレッスンで、お客様一人ひとりの身体の状態を見ながら、正しいフォームや呼吸法を伝えていきます。
しかし、それだけではありません。多くのスタジオでは、以下のような業務も担当することになります。
まず、レッスン前後のお客様対応があります。体験レッスンに来た方へのカウンセリングや、入会手続きの説明、既存会員とのコミュニケーションなど、接客業としての側面も大きいです。
次に、スタジオの運営業務があります。清掃、備品管理、予約システムの対応、SNSでの情報発信など、「裏方」の仕事も少なくありません。特にフリーランスや個人で開業する場合は、集客やマーケティングまで自分で行う必要があります。
「レッスンだけに集中したい」と思っていると、実際の業務とのギャップに戸惑うかもしれません。インストラクターは「先生」であると同時に「サービス業」であることを理解しておくことが大切です。
向いている人・求められるスキル
ピラティスインストラクターに向いているのは、以下のような人です。
まず、人の身体や健康に興味がある人です。ピラティスは解剖学や運動学の知識が土台になります。「身体の仕組みを学ぶのが楽しい」と感じられる人は、長く続けられるでしょう。
次に、人とコミュニケーションを取るのが好きな人です。レッスンでは、お客様の身体の状態を観察し、言葉で伝え、時には励ます必要があります。「教えるのが好き」「人の変化を見るのが嬉しい」という気持ちがあると、やりがいを感じやすいです。
そして、観察眼と共感力がある人です。お客様の身体の微妙な動きを見抜く観察力と、「この人は今どんな気持ちだろう」と寄り添える共感力は、インストラクターにとって大きな武器になります。
一方、「自分が上手にできること」と「教えられること」は別物です。ピラティスが得意でも、教えるのが苦手な人もいます。自分が向いているかどうかは、実際に資格取得の過程で「教える経験」を積みながら見極めていくのが良いでしょう。
未経験からインストラクターになるまでのステップ
ピラティスインストラクターになるために、特別な学歴や運動経験は必要ありません。未経験からでも、正しいステップを踏めばインストラクターとして活動することは可能です。
Step1|自分の目的(就職・副業・独立)を決める
まず最初に考えるべきは「どんな働き方をしたいか」です。
スタジオに就職して正社員として働きたいのか、副業として週末だけレッスンを持ちたいのか、いずれは自分のスタジオを開業したいのか——目的によって、取るべき資格や進むべきルートが変わってきます。
たとえば、大手スタジオへの就職を目指すなら、そのスタジオが採用条件として指定している資格を取得するのが近道です。一方、将来的に独立を考えているなら、より専門性の高い資格や、マシンピラティスの資格まで取得しておくと有利になります。
「とりあえず資格を取ってから考えよう」というのも一つの手ですが、目的が明確な方がモチベーションを保ちやすく、資格取得後の行動もスムーズです。
Step2|資格を取得する
ピラティスインストラクターとして活動するには、何らかの資格を取得するのが一般的です。
ピラティスには国家資格がないため、民間の資格団体が発行する認定資格を取得することになります。主な資格団体には、BASI Pilates、PHI Pilates、STOTT PILATES、FTP Pilates、Balanced Bodyなどがあります。
資格の種類は大きく分けて「マット資格」と「マシン(コンプリヘンシブ)資格」の2つがあります。マット資格は比較的短期間・低コストで取得でき、最初の一歩として選ぶ人が多いです。一方、マシン資格はプライベートレッスンを担当するために必要で、取得にはより多くの時間と費用がかかります。
資格取得にかかる期間は、マット資格で2〜6ヶ月程度、マシン資格まで含めると1年以上かかることもあります。費用は団体やコースによって異なりますが、マット資格で20〜40万円、マシン資格まで取ると100万円を超えることもあります。
Step3|オーディション対策と就職活動
資格を取得したら、いよいよ就職活動です。
ピラティススタジオの多くは、採用時にオーディション(実技試験)を実施します。実際にレッスンをデモンストレーションし、指導力やコミュニケーション能力を見られます。
オーディション対策として重要なのは、資格取得後も継続してレッスン経験を積むことです。資格を取っただけでは、すぐに「教えられる」わけではありません。養成コース中のティーチング練習や、取得後のアシスタント経験などを通じて、実践力を高めていきましょう。
また、就職先の選び方も大切です。大手スタジオは研修制度が充実している反面、レッスン数のノルマがあったり、希望のシフトに入れなかったりすることもあります。個人スタジオは自由度が高い反面、待遇面で不安定なこともあります。自分の優先順位を明確にして選びましょう。
【実態】ピラティスインストラクターの年収・給与事情
ピラティスインストラクターを目指す方にとって、気になるのは「実際どれくらい稼げるのか」ではないでしょうか。ここでは、雇用形態別の収入相場と、収入アップの方法を解説します。
正社員とフリーランス(業務委託)の収入の違い
ピラティスインストラクターの働き方は、大きく分けて「正社員」と「フリーランス(業務委託)」の2つがあります。
正社員の場合、月給制で安定した収入を得られます。大手スタジオの場合、年収は300〜400万円程度が相場です。社会保険や有給休暇などの福利厚生があり、研修制度も充実していることが多いです。ただし、収入の上限があり、どれだけレッスンを頑張っても大幅な年収アップは難しい傾向にあります。
フリーランス(業務委託)の場合、レッスン1本あたりの報酬(レッスンフィー)で収入が決まります。グループレッスンで1本2,000〜5,000円、プライベートレッスンで1本3,000〜8,000円程度が相場です。レッスン数を増やせば収入も増えますが、固定給がないため収入は不安定になりがちです。
どちらを選ぶかは、安定を重視するか、自由度と収入の可能性を重視するかによって変わります。最初は正社員としてキャリアをスタートし、経験を積んでからフリーランスに転向する人も多いです。
「食べていけない」は本当?平均年収のリアル
「ピラティスインストラクターは食べていけない」という声を聞くことがあります。これは半分本当で、半分は誤解です。
確かに、駆け出しのインストラクターが最初から高収入を得るのは難しいです。フリーランスで週に数本しかレッスンを持てない場合、月収10万円に満たないこともあります。
しかし、経験を積み、指名客がつくようになれば、年収400〜500万円以上稼ぐインストラクターも珍しくありません。さらに、自分のスタジオを開業し、複数のインストラクターを雇用するオーナーになれば、年収1,000万円を超えることも可能です。
つまり、「食べていけるかどうか」は、どれだけキャリアアップできるか、どんな働き方を選ぶかによって大きく変わります。
収入を上げるキャリアパス
インストラクターとして収入を上げるには、いくつかの方法があります。
まず、マシン資格を取得してプライベートレッスンを担当できるようになることです。グループレッスンよりも単価が高く、1時間あたりの収入を大幅に増やせます。
次に、SNSやブログなどで発信力を高め、「指名」を増やすことです。お客様から「この人に教わりたい」と選ばれるインストラクターになれば、予約が埋まりやすくなり、単価交渉もしやすくなります。
さらに、養成講座の講師やワークショップの開催など、教える側から「教える人を育てる側」へステップアップする道もあります。
良いことばかりじゃない?「離職」と「後悔」の理由
ピラティスインストラクターは魅力的な仕事ですが、良いことばかりではありません。実際に「辞めたい」と思う人や、キャリアチェンジしていく人も少なくないのが現実です。
体力的な限界とスケジュールの厳しさ
インストラクターは、一見すると優雅な仕事に見えるかもしれません。しかし、実際は体力勝負の仕事です。
1日に何本もレッスンをこなし、その間もお客様の身体を補助したり、デモンストレーションをしたりと、身体を使い続けます。特にマシンピラティスでは、お客様の身体をサポートする場面も多く、腰や肩への負担が蓄積しやすいです。
また、スケジュールも不規則になりがちです。お客様が来やすい早朝や夜、土日にレッスンが集中するため、プライベートの時間が取りにくいと感じる人もいます。
30代、40代と年齢を重ねるにつれて「体力的に続けられるか不安」という声も聞かれます。
集客プレッシャーと人間関係
フリーランスや個人スタジオの場合、集客は自分で行う必要があります。「レッスンの質を上げれば自然とお客様が来る」と思っていると、現実とのギャップに苦しむことになります。
また、スタジオによっては、インストラクター同士の競争が激しかったり、オーナーとの関係がうまくいかなかったりすることもあります。人間関係のストレスは、どの仕事にも共通する悩みですが、小規模なスタジオほど「逃げ場がない」と感じやすいかもしれません。
それでもこの仕事を選ぶ「やりがい」とは
それでも、ピラティスインストラクターを続ける人がいるのは、大きなやりがいがあるからです。
「お客様の身体が変わっていく姿を見られること」「『先生のおかげで腰痛が楽になった』と言われること」「自分が好きなことを仕事にできていること」——こうした喜びは、他の仕事ではなかなか得られないものです。
また、年齢を重ねても続けられる仕事でもあります。身体を酷使する働き方から、経験を活かした指導スタイルに移行すれば、50代、60代でも現役で活躍しているインストラクターは少なくありません。
「辛いこともあるけど、それでも続けたい」と思えるかどうか——それが、この仕事に向いているかどうかの判断基準かもしれません。
就職・転職活動の成功ポイント
ピラティスインストラクターとして就職・転職を成功させるためのポイントを解説します。
求人を見る時のチェックポイント
ピラティススタジオの求人を探す際は、以下のポイントをチェックしましょう。
まず、雇用形態と給与体系です。正社員なのか業務委託なのか、固定給なのか歩合制なのかを確認しましょう。「月収30万円以上可能」と書いてあっても、それが固定給なのか、フルでレッスンを入れた場合の上限なのかで意味が大きく変わります。
次に、研修制度の有無です。特に未経験やキャリアの浅い方は、入社後の研修やフォローアップがあるスタジオを選ぶと安心です。
また、レッスンの担当本数や勤務時間も確認しましょう。週に何本のレッスンを担当するのか、シフトの融通は利くのかなど、働き方の実態を把握しておくことが大切です。
面接で重視されるのは「技術」より「人柄」
ピラティススタジオの採用面接では、もちろん実技力も見られますが、それ以上に重視されるのは「人柄」です。
お客様と直接接する仕事だからこそ、「この人と一緒に働きたいか」「お客様に好かれそうか」という視点で見られます。明るく、誠実で、コミュニケーション能力がある人は、採用されやすい傾向にあります。
面接では、「なぜピラティスインストラクターになりたいのか」「どんなインストラクターになりたいのか」といった質問に対して、自分の言葉で語れるように準備しておきましょう。
また、オーディション(実技試験)がある場合は、完璧な動きよりも「分かりやすく伝える力」「お客様に寄り添う姿勢」が見られます。緊張しすぎず、楽しんで教える姿勢を見せることが大切です。
将来性と新しい働き方
ピラティス業界の将来性と、インストラクターとしての新しい働き方について解説します。
ピラティス業界の需要拡大とこれからのチャンス
ピラティス業界は、ここ数年で急速に成長しています。健康意識の高まりや、姿勢改善・体幹トレーニングへの関心の増加を背景に、ピラティススタジオの数は増え続けています。
特にマシンピラティスの人気が高まっており、大手スタジオの出店が相次いでいます。それに伴い、インストラクターの需要も増加しています。
また、高齢化社会の進展により、リハビリや介護予防としてのピラティス需要も期待されています。理学療法士や医療従事者がピラティス資格を取得するケースも増えており、医療・福祉分野との連携も進んでいます。
今からインストラクターを目指す人にとっては、チャンスの多い時期と言えるでしょう。
オンライン・副業・週末起業という選択肢
従来の「スタジオで働く」というスタイルだけでなく、新しい働き方も広がっています。
オンラインレッスンは、コロナ禍をきっかけに急速に普及しました。自宅から全国のお客様にレッスンを届けることができ、場所にとらわれない働き方が可能です。
また、副業としてピラティスインストラクターをする人も増えています。本業を持ちながら、週末だけレッスンを持つというスタイルは、リスクを抑えながらインストラクターとしてのキャリアをスタートする方法として人気です。
さらに、自宅の一室やレンタルスペースを使った「週末起業」も選択肢の一つです。固定費を抑えながら、自分のペースでスタジオを運営することができます。
ピラティスインストラクターに関するよくある質問
未経験・運動経験なしでもインストラクターになれますか?
なれます。ピラティスインストラクターになるために、特別な運動経験は必要ありません。資格取得の過程で、ピラティスの動きや指導法を一から学ぶことができます。実際に、運動経験がないところからインストラクターになった人も多くいます。ただし、ピラティスの実践経験がある方が、資格取得もスムーズに進みやすいです。
何歳までインストラクターとして働けますか?
年齢の上限はありません。50代、60代でも現役で活躍しているインストラクターは少なくありません。年齢を重ねるにつれて、自分自身が動く量を減らし、言葉での指導や経験を活かしたアドバイスにシフトしていくことで、長く続けることができます。むしろ、人生経験が豊富なインストラクターを求めるお客様もいます。
資格取得にはどれくらいの期間と費用がかかりますか?
資格の種類によって異なります。マット資格の場合、期間は2〜6ヶ月程度、費用は20〜40万円程度が相場です。マシン(コンプリヘンシブ)資格まで取得する場合は、期間は1年以上、費用は100万円を超えることもあります。働きながら取得できるコースもあるので、自分のライフスタイルに合った資格団体を選ぶことが大切です。
副業としてインストラクターをすることは可能ですか?
可能です。週末だけレッスンを持つ、オンラインレッスンを提供するなど、本業と両立しながらインストラクター活動をしている人は増えています。副業から始めて、軌道に乗ってから本業に切り替えるというキャリアパスも一つの選択肢です。ただし、本業の就業規則で副業が禁止されていないか確認しておきましょう。
男性でもピラティスインストラクターになれますか?
もちろんなれます。ピラティスは女性のイメージが強いですが、男性のインストラクターも増えています。特に、アスリートのパフォーマンス向上や、男性特有の身体の悩み(腰痛、姿勢改善など)に対応できるインストラクターは需要があります。男性インストラクターが少ないからこそ、差別化できるというメリットもあります。
まとめ|一生の仕事にするためのキャリアプランを描こう
ピラティスインストラクターは、好きなことを仕事にでき、人の身体と心を変えるサポートができる、やりがいのある職業です。
一方で、収入面での不安や、体力的な負担、集客のプレッシャーなど、厳しい面もあります。「好き」だけでは続けられないこともあるのが現実です。
だからこそ、最初からキャリアプランを描いておくことが大切です。自分はどんな働き方をしたいのか、どこを目指すのか——その目標が明確であれば、資格選びも、就職先選びも、キャリアアップの方向性も見えてきます。
「ピラティスが好き」という気持ちを大切にしながら、現実的な計画を立てて一歩を踏み出してください。きっと、やりがいと充実感に満ちたキャリアが待っているはずです。
