ピラティスのレッスンで「骨盤をニュートラルに」「インプリントにして」と指示されたことはありませんか?
この2つの骨盤ポジションは、ピラティスの効果を最大限に引き出すための土台となる重要な概念です。しかし、正しい位置が分からないまま動いている方や、どちらを使えばいいのか迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、ニュートラルとインプリント(Cカーブ)それぞれの意味と役割、正しい作り方、そして動きに応じた使い分けのポイントを詳しく解説します。
- 骨盤のポジションがピラティスの効果を左右する理由
- 自分の骨盤が正しい位置にあるかセルフチェックする方法
- ニュートラルとインプリントの作り方と感覚のつかみ方
- 動きによって2つのポジションを使い分ける基準
- 反り腰や腰痛がある場合の対処法
骨盤のポジションがピラティスの命である理由
ピラティスでは、手足を動かす前に「骨盤の安定」が求められます。骨盤は身体の中心に位置し、上半身と下半身をつなぐ土台だからです。この土台が安定していないと、手足の動きがぐらついたり、腰に余計な負担がかかったりしてしまいます。
ニュートラル:解剖学的に最も衝撃を分散できる位置
ニュートラルポジションとは、骨盤が前にも後ろにも傾いていない、自然なカーブを保った状態のことです。
人間の背骨は、横から見るとS字カーブを描いています。首(頸椎)は前弯、背中(胸椎)は後弯、腰(腰椎)は前弯——このカーブがあることで、歩いたり走ったりする時の衝撃を分散できるようになっています。
ニュートラルは、このS字カーブを維持した状態です。仰向けに寝た時、腰と床の間に自然な隙間ができるのが特徴です。ピラティスでは、基本的にこのニュートラルポジションを維持しながら動くことを目指します。
インプリント(Cカーブ):腹筋を使って腰を守る位置
インプリントは、骨盤をやや後傾させ、腰のカーブをフラットに近づけた状態です。「Cカーブ」とも呼ばれます。
この時、腰と床の間の隙間がほとんどなくなり、腰椎が床に軽く押し付けられるような感覚になります。腹筋(特に腹横筋)を使って骨盤を後傾させることで、腰を内側から守る状態を作ります。
インプリントは、両足を床から浮かすなど、腰に大きな負荷がかかる動きの時に使います。ニュートラルのまま足を浮かそうとすると、腰が反って痛みの原因になることがあるためです。
ポジションを間違えると腰痛の原因になる
骨盤のポジションが適切でないと、ピラティスの効果が半減するだけでなく、腰痛を引き起こすリスクがあります。
よくある間違いは以下の2つです。
負荷がかかる動きでニュートラルのままにしてしまう:両足を浮かす動き(テーブルトップポジションなど)でニュートラルを維持しようとすると、腰が反りすぎて腰椎に負担がかかります。
常にインプリントにしてしまう:インプリントは腰を守るためのポジションですが、すべての動きで使うわけではありません。常に腰を床に押し付けていると、自然なS字カーブが失われ、かえって腰への負担が増えることがあります。
どちらのポジションを使うべきかは、動きの種類や腰にかかる負荷によって決まります。この使い分けを理解することが、ピラティスで腰を痛めずに効果を得るための第一歩です。
正しいニュートラルポジションの探し方
ニュートラルポジションは「感覚」で覚えるものですが、最初は客観的な指標を使って確認することが大切です。仰向けの状態で、以下の2つの方法を試してみてください。
仰向けで「手のひら一枚分」の隙間を作る
仰向けに寝て、両膝を立てた状態(膝を曲げて足の裏を床につける)を作ります。
この時、腰と床の間に手のひらを差し込んでみてください。ニュートラルポジションでは、手のひら一枚分がギリギリ入る程度の隙間があるのが目安です。
隙間が大きすぎる場合は、骨盤が前傾しすぎている(反り腰の状態)可能性があります。逆に、隙間がほとんどなく腰が床にべったりついている場合は、骨盤が後傾しすぎているかもしれません。
この「手のひら一枚分」という表現はあくまで目安です。人によって骨盤の形や腰のカーブは異なるため、厳密に一枚分でなくても問題ありません。大切なのは、無理に腰を反らせたり押し付けたりせず、自然な位置を見つけることです。
恥骨と腰骨(ASIS)を結んだ三角形を床と平行にする
より正確にニュートラルを確認する方法として、骨盤の骨を触って位置を確認する方法があります。
仰向けに寝た状態で、両手を骨盤の前に置きます。腰の前側には「上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)」と呼ばれる骨の出っ張りがあります。英語では「ASIS」と呼ばれ、ピラティスのレッスンでもこの名前で説明されることがあります。
両手の人差し指と親指で三角形を作り、親指を恥骨に、人差し指を左右のASIS(腰骨の出っ張り)に置きます。この三角形が床と平行になっている状態が、ニュートラルポジションです。
三角形が天井の方を向いている場合は骨盤が前傾しすぎ、逆に足の方を向いている場合は後傾しすぎています。
この方法は、インストラクターが生徒の骨盤の位置を確認する時にも使われます。自分でも触って確認できるようになると、レッスン中に迷うことが減るでしょう。
Cカーブ(インプリント)が必要なシーンと作り方
ニュートラルが基本であるのに対し、インプリントは「腰を守るために使う」ポジションです。どんな時にインプリントに切り替えるべきなのか、そしてどうやって作るのかを解説します。
両足を床から浮かす時は必ずインプリントにする
ピラティスでは、仰向けで両足を床から浮かす動きがたくさんあります。代表的なのが「テーブルトップポジション」——膝と股関節をそれぞれ90度に曲げ、両脚を宙に浮かせた姿勢です。
この時、足の重さが腰にかかります。ニュートラルのまま足を浮かそうとすると、腰が床から浮き上がって反ってしまい、腰椎に大きな負担がかかります。
インプリントにすることで、腹筋が収縮し、腰が床から離れるのを防ぎます。これが「腰を守る」ということです。
以下の動きでは、基本的にインプリントを使います。
- 両足を床から浮かす動き(テーブルトップ、ハンドレッドなど)
- 脚を前方に伸ばす動き(シングルレッグストレッチなど)
- 腹筋を使って上体を起こす動き(チェストリフトなど)
逆に、片足だけ浮かす場合や、両足が床についている状態での動きは、ニュートラルを維持することが多いです。
お尻を浮かすのではなく「お腹で腰を床に押し付ける」感覚
インプリントを作る時によくある間違いが、「お尻をギュッと締めて骨盤を持ち上げる」というやり方です。
確かにお尻に力を入れると骨盤は後傾しますが、これはお尻の筋肉(大臀筋)で無理やり動かしているだけで、腹筋が正しく使えていません。また、お尻を浮かすと腰が床から離れてしまい、インプリントの意味がなくなります。
正しいインプリントは、お腹の力で骨盤を後傾させます。イメージとしては、「おへそを背骨に近づける」「お腹で腰を床に押し付ける」という感覚です。
具体的なやり方は以下の通りです。
- 仰向けで両膝を立てた状態からスタート
- 息を吐きながら、おへそを背骨の方に引き込む
- 骨盤がほんの少しだけ後傾し、腰と床の隙間がなくなる
- この時、お尻は床についたまま、浮かさない
- 腹筋(特に下腹部)に軽い緊張を感じたら成功
インプリントはあくまで「軽い後傾」であり、骨盤を思い切り丸め込む必要はありません。やりすぎると背中が丸まりすぎて、今度は逆に腰に負担がかかることがあります。
骨盤ポジションに関するよくある質問
反り腰でニュートラルを作ると腰が痛いです
反り腰の方は、骨盤が前傾しすぎた状態が「普通」になっているため、ニュートラルに戻そうとすると違和感や痛みを感じることがあります。
この場合は、最初から完璧なニュートラルを目指す必要はありません。まずはインプリントから始めて、腹筋の使い方を覚えることが大切です。腹筋が強くなり、骨盤をコントロールできるようになると、少しずつニュートラルの位置を維持できるようになります。
また、腰に痛みがある場合は、インストラクターに伝えてください。痛みの原因によっては、医師への相談が必要なこともあります。
インストラクターによって言うことが違うのはなぜ?
ピラティスには複数の流派(スクール)があり、骨盤ポジションに対する考え方が少し異なることがあります。
例えば、クラシカルピラティス(ジョセフ・ピラティスのオリジナルに近い流派)では、ニュートラルよりもインプリントを重視する傾向があります。一方、現代的なピラティス(STOTT PILATESなど)では、ニュートラルを基本とし、必要に応じてインプリントに切り替えるという考え方が主流です。
どちらが正解というわけではなく、それぞれに理論的な背景があります。迷った時は、今受けているレッスンのインストラクターの指示に従いつつ、なぜそのポジションを取るのか質問してみると良いでしょう。
立位(立っている時)のニュートラルはどう確認する?
立った状態でのニュートラルは、仰向けの時と同じ考え方です。骨盤が前にも後ろにも傾いておらず、背骨の自然なS字カーブが保たれている状態を目指します。
簡単な確認方法は、壁に背中をつけて立つことです。頭、背中(肩甲骨あたり)、お尻、かかとの4点が壁につき、腰と壁の間に手のひら一枚分の隙間がある状態がニュートラルの目安です。
日常生活では、片足に体重をかけて立つ癖や、スマホを見て前かがみになる姿勢などで、骨盤が傾いていることが多いです。ピラティスで身につけた骨盤の意識を、日常の立ち姿勢にも活かしてみてください。
Cカーブでお腹がぽっこり出るのは間違いですか?
インプリントを作る時に、下腹部がぽっこり膨らんでしまう場合は、腹筋の使い方が正しくない可能性があります。
正しいインプリントでは、お腹は膨らむのではなく、むしろ引き込まれる感覚になります。「おへそを背骨に近づける」イメージで、下腹部を薄くするように意識してみてください。
お腹が膨らんでしまう原因としては、息を止めていたり、腹圧を外側にかけてしまっていたりすることが考えられます。呼吸を止めずに、吐く息に合わせてお腹を引き込む練習をしてみましょう。
骨盤底筋とニュートラルの関係は?
骨盤底筋は、骨盤の底を支えるハンモックのような筋肉群です。ニュートラルポジションでは、骨盤底筋が最も効率よく働ける状態になります。
骨盤が前傾しすぎていると骨盤底筋は緩みやすく、後傾しすぎていると過度に緊張しやすくなります。ニュートラルを維持することで、骨盤底筋は適度な張りを保ちながら機能できるのです。
産後の尿漏れ対策や骨盤底筋トレーニングを目的にピラティスを行う場合は、まずニュートラルポジションを正しく作れるようになることが重要です。詳しくは、産後の骨盤ケアについて解説した別記事をご覧ください。
まとめ|骨盤の安定が、手足の自由な動きを作る
ピラティスにおける骨盤のポジションは、すべての動きの土台となる重要な要素です。
ニュートラルは、骨盤が自然な位置にある基本のポジション。背骨のS字カーブを維持し、日常生活でも身体への負担を分散してくれます。
インプリント(Cカーブ)は、両足を浮かすなど腰に負荷がかかる時に使うポジション。腹筋を使って骨盤を軽く後傾させ、腰を内側から守ります。
この2つを動きに応じて使い分けることで、腰痛を予防しながらピラティスの効果を最大限に引き出すことができます。
最初は「どちらが正しいか分からない」と感じるかもしれませんが、レッスンを重ねるうちに身体が覚えていきます。まずは仰向けでニュートラルの感覚をつかむところから始めてみてください。骨盤の安定が身につけば、手足は驚くほど自由に動くようになります。
