「最近よく聞くピラティスって、一体どんなものなんだろう?」「体に良さそうだけど、なんだか難しそう…」そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ピラティスに興味を持ち始めたばかりの初心者の方に向けて、その歴史から具体的な効果、ヨガとの違いまで、あらゆる疑問に分かりやすくお答えしていきます。
身体の不調を改善したい方、しなやかで美しいボディラインを手に入れたい方、そして心もすっきりと整えたい方。ピラティスは、そんなあなたの素敵な味方になってくれるかもしれません。さあ、一緒にピラティスの世界の扉を開いてみましょう。
ピラティスとは何か?歴史と基本理念

最近、モデルやアスリートが実践していることで注目を集めているピラティスですが、そのルーツや基本的な考え方をご存じでしょうか?
まずは、ピラティスがどのようなエクササイズなのか、その歴史と基本理念から見ていきましょう。
ピラティスの誕生と創始者ジョセフ・ピラティス
ピラティスは、20世紀初頭にドイツ人のジョセフ・H・ピラティス氏によって考案されたエクササイズメソッドです。彼は幼少期、病弱で喘息やリウマチ熱に苦しんでいました。
その経験から「どうすれば心も体も健康になれるのか」を生涯にわたって追求し、ヨガやボクシング、体操など、古今東西のさまざまな身体理論を研究して、独自のメソッドを体系化したのです。
リハビリから生まれたエクササイズの特徴
ピラティスの大きな特徴は、もともと第一次世界大戦で負傷した兵士たちのためのリハビリとして開発された点にあります。そのため、体に大きな負担をかけずに、身体の奥深くにある「インナーマッスル」や体幹を鍛えることを重視しています。
寝たきりの兵士でもできるように、ベッドのスプリングを改良して器具を作ったのが、現在のマシンピラティスの始まりだと言われています。このように、リハビリを起源に持つピラティスは、年齢や体力に関わらず、誰でも安全に始められるのが魅力です。
ピラティスの6つの原則(呼吸・集中・中心・コントロール・正確さ・流れ)
ピラティスには、ただ体を動かすだけでなく、その効果を最大限に引き出すための6つの基本原則があります。
- 呼吸 (Breathing): 正しい胸式呼吸で、体の隅々まで酸素を届け、動きをサポートします。
- 集中 (Concentration): 意識を「今、この瞬間の体の動き」に向け、心と体を繋げます。
- 中心 (Centering): すべての動きは、お腹周りの「パワーハウス」と呼ばれる中心部から生み出されると考えます。
- コントロール (Control): 勢いや反動を使わず、自分の意思で筋肉を正確に動かします。
- 正確さ (Precision): 回数よりも、一つひとつの動きの質と正しさを大切にします。
- 流れ (Flow): 動きを止めず、なめらかで優雅に、一連の動作として繋げていきます。
これらの原則を意識することで、ピラティスは単なる筋トレではなく、心と体を統合するエクササイズになるのです。難しく感じるかもしれませんが、少しずつ意識することから始めてみましょう。
ピラティスの効果|身体と心にもたらす5つの変化
ピラティスを続けることで、私たちの身体と心にはどのような良い変化が訪れるのでしょうか。ここでは、代表的な5つの効果をご紹介します。
体幹(コア)強化で姿勢が改善される
ピラティスの最も代表的な効果は、姿勢の改善です。デスクワークやスマホの使いすぎで、猫背になったり、肩が内側に入ったりしていませんか?
ピラティスでは、背骨や骨盤を支える「体幹(コア)」のインナーマッスルを重点的に鍛えます。
この体幹が安定すると、まるで建物の土台がしっかりするように、背骨が自然と正しい位置に伸び、美しい姿勢を保てるようになります。ぽっこりお腹の解消にもつながる、嬉しい効果ですね。
インナーマッスルを鍛えて基礎代謝がアップ
「インナーマッスル」は、身体の深い部分にあるため、通常の筋トレではなかなか鍛えにくい筋肉です。ピラティスは、このインナーマッスルに効果的にアプローチできます。
筋肉量が増えると、何もしなくても消費されるエネルギーである「基礎代謝」が向上します。
つまり、ピラティスを続けることで、自然と太りにくく、痩せやすい身体へと変わっていくことが期待できるのです。ダイエット目的の方には特におすすめの効果です。
肩こり・腰痛など慢性的な不調の軽減
つらい肩こりや腰痛の多くは、姿勢の乱れや特定の筋肉の使いすぎが原因で起こります。
ピラティスは、体の歪みを整え、筋肉のバランスを改善させる効果があります。
背骨を一つひとつ丁寧に動かすエクササイズで柔軟性を取り戻し、体幹を安定させることで、肩や腰にかかる負担を根本から減らしていくことができます。
柔軟性とバランス感覚の向上
ピラティスの流れるような動きは、関節の可動域を広げ、筋肉の柔軟性を高めてくれます。身体が硬いと感じている方でも、続けるうちに少しずつしなやかになっていくのを実感できるでしょう。
また、体幹を意識しながら動くことで、身体の軸が安定し、バランス感覚が養われます。ふとした時につまずきにくくなったり、立ち姿が美しくなったりと、日常生活の様々な場面でその効果を感じられるはずです。
ストレス軽減と集中力アップのメンタル効果
ピラティスは、体だけでなく心にも素晴らしい効果をもたらします。
深い胸式呼吸は、乱れがちな自律神経を整え、心をリラックスさせてくれます。また、自分の体の動きにじっくりと意識を向ける時間は、まるで「動く瞑想」のようなものです。
日々の悩みやストレスから解放され、終わった後には頭がすっきりとクリアになり、集中力が高まるのを感じられるでしょう。
ピラティスとヨガの違い|どちらを選ぶべき?

「ピラティスとヨガって、何が違うの?」これは本当によく聞かれる質問です。
どちらも心身に良い影響を与える素晴らしいメソッドですが、その目的やアプローチには違いがあります。
どちらが自分に合っているか、一緒に考えてみましょう。
目的の違い(身体機能向上 vs 心身の統合)
- ピラティス
もともとリハビリから始まっているため、骨格の歪みを整え、体幹を強化し、身体の機能を向上させることに重きを置いています。より解剖学的なアプローチで、身体を正しく使うことを目指します。 - ヨガ
古代インド発祥の修行法であり、ポーズ(アーサナ)、呼吸法、瞑想を通じて心と体、そして魂を繋げ、心身の調和を図ることを大きな目的としています。精神的な側面や哲学的な教えも大切にされています。
動きの違い(流れる動き vs 静と動)
- ピラティス
エクササイズの間、常に体幹を意識し、動きをコントロールし続けます。一つの動きから次の動きへ、途切れることなく流れるように動くのが特徴です。 - ヨガ
一つのポーズを一定時間キープすることが多く、静的な動きが中心となります。ポーズからポーズへの移行はありますが、ピラティスほど連続的な流れを重視しないスタイルもあります。
呼吸法の違い(胸式呼吸 vs 腹式呼吸)
- ピラティス
主に「胸式呼吸」を用います。お腹を締めたまま、胸(肋骨)を広げるように息を吸うことで、体幹を安定させたままエクササイズを行うことができます。 - ヨガ
主に「腹式呼吸」を用います。息を吸うときにお腹を大きく膨らませ、吐くときにへこませることで、副交感神経を優位にし、深いリラクゼーション効果を得ることを目指します。
あなたに合うのはどっち?
どちらを始めるか迷ったら、あなたの目的で選んでみるのがおすすめです。
- こんなあなたにはピラティスがおすすめ!
- 姿勢を改善して、きれいなボディラインになりたい
- 肩こりや腰痛などの体の不調を根本から治したい
- 体幹を鍛えて、スポーツのパフォーマンスを上げたい
- しなやかで機能的な体を手に入れたい
- こんなあなたにはヨガがおすすめ!
- ストレスを解消して、心からリラックスしたい
- 体の柔軟性を高めたい
- 自律神経のバランスを整えたい
- 瞑想に興味がある
もちろん、両方試してみて、心地よいと感じる方を選ぶのが一番です。最近では、両方の良いところを取り入れたスタジオもありますよ。
ピラティスの種類|マットピラティスとマシンピラティス
ピラティスには、大きく分けて「マット」で行うものと、「マシン(器具)」を使って行うものの2種類があります。それぞれの特徴を知って、自分に合ったスタイルを見つけましょう。
マットピラティスの特徴とメリット
マットピラティスは、その名の通りマットの上で行うピラティスです。自重(自分の体重)を利用してエクササイズを行います。
マットピラティスのメリットは以下の通りです。
- マット一枚あればどこでもできる手軽さ。
- グループレッスンが多く、比較的リーズナブル。
- 自分の身体と向き合い、自力でコントロールする力が養われる。
自分の身体だけで動きを支えるため、体幹の強さがより求められますが、その分、自分の身体への理解が深まるという魅力があります。
マシンピラティス(リフォーマー)の特徴とメリット
マシンピラティスは、「リフォーマー」をはじめとする専用の器具を使って行います。このマシンにはバネがついており、その抵抗や補助を利用してエクササイズをします。
マシンピラティスには以下に挙げるメリットがあります。
- マシンの補助により、正しいフォームで動きやすい。
- 負荷の調整が可能なため、初心者から上級者まで対応できる。
- 特定の筋肉に的確にアプローチできる。
- プライベートレッスンが多く、きめ細やかな指導を受けやすい。
マシンが動きをサポートしてくれるので、運動経験が少ない方や身体が硬い方でも、無理なく正しい動きを習得しやすいのが大きな利点です。
初心者はどちらから始めるべき?
「どちらから始めたらいいの?」と迷いますよね。もしあなたが運動初心者で、身体の使い方に自信がないのであれば、マシンピラティスから始めるのがおすすめです。
マシンが正しい動きへ導いてくれるため、ピラティスの基本である「身体の正しい使い方」を効率的に学ぶことができます。まずはマシンで身体の感覚を掴み、慣れてきたらマットピラティスに挑戦するという流れが理想的かもしれません。
もちろん、スタジオによっては初心者向けのマットクラスも充実しています。一番良いのは、体験レッスンなどを利用して両方を試してみて、ご自身が続けやすいと感じる方を選ぶことです。
ピラティスに向いている人・向いていない人
「私でもピラティス、できるかな?」と不安に思う方もいるかもしれませんね。ここでは、どのような人にピラティスが向いているのか、また、少し注意が必要なケースについてお話しします。
ピラティスが向いている人の特徴
- 姿勢を良くしたい、ボディラインを整えたい人: ピラティスはまさに姿勢改善のプロフェッショナルです。
- 慢性的な肩こりや腰痛に悩んでいる人: 痛みの根本原因である体の歪みにアプローチできます。
- 運動不足を解消したいけれど、激しい運動は苦手な人: 自分のペースで無理なく続けられます。
- 集中力を高め、心を落ち着けたい人: 「動く瞑想」で心身ともにリフレッシュできます。
- しなやかで機能的な身体を作りたい人: ただ痩せるだけでなく、美しく動ける身体を目指せます。
ピラティスが向いていない人とその理由
基本的に、ピラティスは誰にでもおすすめできるエクササイズですが、強いて「向いていない」ケースを挙げるとすれば、「短期間でとにかく筋肉を大きくしたい」「大量の汗をかいて爽快感を得たい」という方には、少し物足りなく感じるかもしれません。
「向いていない」というよりは、「目的が少し違う」というイメージですね。ご自身のゴールに合わせて、最適な方法を選ぶことが大切です。
ピラティスは、派手さはあまりなく、じっくりと体の内側から変化させていくメソッドです。
年齢・体力に関わらず誰でも始められる理由
ピラティスは、もともとリハビリ用に考案されたエクササイズなので、体に過度な負担がかかりません。負荷の調整も簡単で、一人ひとりの体力やその日のコンディションに合わせてプログラムを組むことができます。
そのため、10代の学生さんから80代以上のご年配の方まで、性別や運動経験を問わず、本当に誰でも安全に楽しむことができるのです。
ピラティス初心者が最初に知るべき基本動作
ここからは、ピラティスを始める上で欠かせない3つの基本動作をご紹介します。この基本をマスターすることが、効果を実感するための近道になりますよ。
ニュートラルポジションの取り方
ニュートラルポジションとは、背骨が最も自然で、体に負担がかからない理想的なカーブを描いている状態のことです。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます。足は腰幅に開きましょう。
- 骨盤の左右の出っ張った骨(腰骨)と、恥骨を結んだ三角形が、床と平行になるように意識します。
- このとき、腰とマットの間に手のひら一枚分くらいの隙間ができるのが理想です。これがあなたのニュートラルポジションです。
このポジションを保つ感覚を覚えることが、多くのエクササイズの土台となります。
胸式呼吸のやり方とコツ
ピラティスでは、お腹を薄く保ったまま行う「胸式呼吸」が基本です。
- 鼻から息を吸いながら、肋骨(あばら骨)を左右、そして背中側にも大きく広げるイメージを持ちます。風船が膨らむような感じです。
- 口から「はーっ」と長く息を吐きながら、広げた肋骨を中央に閉じていきます。このとき、お腹はさらに薄く、引き締めていく意識を持ちましょう。
コツは、肩の力を抜いてリラックスすることです。慣れるまでは、自分の肋骨に手を当てて、動きを確認しながら行うのがおすすめです。
Cカーブ(背骨を丸める動き)の基本
Cカーブは、背骨をアルファベットの「C」のように、なめらかに丸める動きです。腹筋を使い、背骨の柔軟性を高めるための重要な動きです。
- 床に座り、膝を立てます。
- 息を吐きながら、おへそを背骨の方に引き込むようにして、骨盤からゆっくりと後ろに倒れていきます。
- 腰、背中の下の方、真ん中…と、背骨を一つひとつ床につけていくようなイメージで、なめらかなカーブを作りましょう。
急に倒れたり、首に力が入ったりしないように注意してくださいね。
ピラティスの効果を感じるまでの期間と頻度

「ピラティスを始めたら、どれくらいで効果が出るの?」というのは気になるところですよね。創始者の有名な言葉を参考に、効果実感の目安と理想的な頻度を見ていきましょう。
効果を実感できるタイミング(10回・20回・30回の法則)
創始者ジョセフ・ピラティスは、こう残しています。 「10回で違いを感じ、20回で見た目が変わり、30回で体のすべてが変わる」
これは、ピラティスの効果を的確に表した言葉として、今も語り継がれています。
- 10回: 呼吸が深くなったり、体の使い方の意識が変わったりと、自分の中での「感覚の違い」を感じ始める時期です。
- 20回: 周りの人から「姿勢が良くなったね」「なんだか引き締まった?」と言われるなど、見た目に変化が現れ始めます。
- 30回: 筋肉がつき、柔軟性が向上し、心身ともに不調が改善されるなど、文字通り「体が変わった」と確信できる段階です。
もちろん個人差はありますが、一つの素敵な目標になりますね。
週何回通うのが理想的?目的別の推奨頻度
効果を早く実感するためには、継続することが何よりも大切です。
- 健康維持・リフレッシュが目的の場合
週に1回のペースでも、心と体を整える良い習慣になります。 - 姿勢改善や不調の改善をしっかり目指す場合
週に2〜3回のペースがおすすめです。正しい体の使い方を体が忘れずに、効果を積み重ねていくことができます。
無理のない範囲で、自分のライフスタイルに合った頻度を見つけることが、長く続ける秘訣です。
継続するためのモチベーション維持法
続けることが大事と分かっていても、モチベーションを保つのは難しい時もありますよね。そんな時は、
- 小さな変化に目を向ける
「前より呼吸がしやすくなった」「この動きが楽になった」など、自分の成長を褒めてあげましょう。 - 目標を具体的にする
「3ヶ月後には、ワンピースをきれいに着こなす!」など、ワクワクする目標を立てるのがおすすめです。 - 仲間を見つける
グループレッスンに参加したり、友人と一緒に始めたりするのも良いでしょう。 - お気に入りのウェアを見つける
気分が上がるウェアを着るだけで、スタジオに向かう足取りも軽くなりますよ。
ピラティスを始める前に知っておきたい注意点
安全に、そして楽しくピラティスを続けるために、いくつか知っておいていただきたい注意点があります。
避けるべきタイミング・禁忌事項
以下のような場合は、ピラティスを行うのをお休みするか、事前に医師やインストラクターに相談することが大切です。
- 発熱している時
- 怪我の急性期(痛みや腫れがひどい時)
- 飲酒後
- 妊娠中で、医師の許可がない場合
- 重度の骨粗しょう症やヘルニアなど、特定の疾患をお持ちの場合
自己判断せず、専門家の意見を聞くようにしましょう。
初心者がやりがちな間違い
良かれと思ってやっていることが、実は効果を半減させているかもしれません。
- 呼吸を止めてしまう
動きに集中するあまり、呼吸が浅くなったり止まったりしがちです。常に呼吸を意識しましょう。 - 反動を使って動いてしまう
勢いで動くのではなく、筋肉で身体をコントロールすることがピラティスの神髄です。 - アウターマッスルばかり使ってしまう
- 首や肩に力が入っていませんか?リラックスして、お腹の奥深く(コア)を意識することが大切です。
インストラクターの指導をよく聞き、正しいフォームを身につけることが上達への一番の近道です。
正しい服装と持ち物
ピラティスを始める際の服装と持ち物は、とてもシンプルです。
- 服装
身体のラインが見えやすい、伸縮性のあるウェアがおすすめです。Tシャツやレギンス、スウェットなどでOKです。ダボっとした服装は、動きの妨げになったり、正しいフォームの確認がしにくかったりするので避けましょう。 - 持ち物:
- 水分補給用の飲み物
- 汗拭きタオル
- (スタジオによりますが)ヨガマットやピラティスソックス
多くのスタジオではマットのレンタルが可能です。事前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ:ピラティスで理想の身体と心を手に入れよう
ここまで、ピラティスの基本から効果、始め方までを詳しく解説してきました。ピラティスは、単に体を鍛えるだけでなく、自分の心と体に向き合い、その声を聞くための素晴らしい時間を与えてくれます。
姿勢が美しくなれば、自分に自信が持てるようになります。体の痛みがなくなれば、毎日をもっと活動的に楽しめます。心が穏やかになれば、周りの人にも優しくなれるかもしれません。
「10回で違いを感じ、20回で見た目が変わり、30回で体のすべてが変わる」 創始者ピラティス氏のこの言葉を信じて、あなたも新しい一歩を踏み出してみませんか?ピラティスは、きっとあなたの人生をより豊かに、輝かせてくれるはずです。
