「お腹をえぐるように」「背骨を一本ずつ動かして」「耳と肩を遠ざけて」——ピラティスのレッスンでは、独特な表現や専門用語が飛び交います。
言葉の意味が分からないまま動いていると、「なんとなくそれっぽく動いているだけ」になってしまい、本来の効果を得られないことも。逆に、用語の意味と身体の使い方を理解できれば、同じ動きでも効果が格段に変わります。
この記事では、ピラティスでよく使われる重要な用語と、レッスンで聞く「謎の指示」の意味を分かりやすく解説します。
- インストラクターの指示の意味が分かり、動きに迷わなくなる
- 用語を理解することで、レッスンの効果を最大化できる
- 自宅練習やYouTube動画でも正しく動けるようになる
- 「意識することが多すぎてパニック」から抜け出せる
レッスンでよく聞く「謎の指示」を解読する
まずは、レッスンでよく聞くけれど「どう動けばいいの?」と戸惑いがちな指示を解説します。言葉のイメージと身体の動かし方がつながると、動きの質が一気に変わります。
「お腹をえぐるように(スクープ)」=腹横筋の収縮
「スクープ(Scoop)」は、ピラティスで最も頻繁に使われる言葉のひとつです。直訳すると「すくう」「えぐる」という意味。
これは、お腹の表面にある腹直筋(いわゆるシックスパック)ではなく、その奥にある「腹横筋」を使う感覚を表しています。
イメージとしては、おへそを背骨に近づけるように、お腹を薄く引き込む感覚です。息を吐きながら、お腹がぺたんと凹むように意識してみてください。
クランチ(腹筋運動)のようにお腹を「縮める」のではなく、お腹を「薄くする」「引き込む」という感覚が大切です。この腹横筋の収縮が、ピラティスの土台となる「パワーハウス」の活性化につながります。
「耳と肩を遠ざけて」=肩甲骨の下制
この指示は、肩に力が入って首がすくんでいる時によく言われます。
肩甲骨を「下げる」動き(下制)を促すための表現です。緊張すると肩が上がりがちですが、肩甲骨を下げることで首が長くなり、肩周りの余計な緊張が抜けます。
コツは、肩を「下げよう」と意識するのではなく、「首を長くする」「耳と肩の距離を広げる」とイメージすること。無理に力で下げようとすると、かえって緊張してしまいます。
デスクワークやスマートフォンの使用で肩が上がりやすい現代人にとって、この感覚を身につけることは日常生活でも役立ちます。
「坐骨を寄せて」=骨盤底筋のスイッチ
「坐骨を寄せて」という指示は、骨盤底筋群を活性化させるためのキューです。
坐骨とは、椅子に座った時にお尻の下で当たる、左右2つの骨のこと。この左右の坐骨を「寄せる」ようにイメージすると、骨盤底筋群(骨盤の底にあるハンモック状の筋肉群)にスイッチが入ります。
実際に骨が動くわけではありませんが、「寄せる」とイメージすることで、骨盤底筋と深層外旋六筋(股関節を安定させる筋肉群)が連動して働き始めます。
この感覚は、パワーハウスの安定や、尿漏れ予防にもつながる大切な意識です。
「テーブルトップポジション」=股関節・膝関節90度の基本姿勢
テーブルトップポジションは、仰向けに寝た状態で両脚を持ち上げ、股関節と膝関節をそれぞれ90度に曲げた姿勢のことです。
横から見ると、すねがテーブルの天板のように床と平行になることから、この名前がついています。
ピラティスでは、この姿勢を起点にさまざまなエクササイズを行います。ポイントは、脚を持ち上げる時に腰が反らないこと。骨盤をニュートラル(自然な位置)に保つか、必要に応じてインプリント(腰を床に押し付ける)にすることで、腰への負担を防ぎます。
この姿勢を正しく取れるかどうかが、多くのエクササイズの効果を左右します。
これが分かれば効果倍増!ピラティスの3大重要概念
ここからは、ピラティスの根幹となる3つの重要概念を解説します。これらを理解しておくと、個々の指示の意味がより深く分かるようになります。
エロンゲーション(Elongation):脳天と足先で引っ張り合う「軸の伸長」
エロンゲーションは、「伸長」を意味する言葉です。ピラティスでは、頭のてっぺんと足先(または尾骨)で引っ張り合うように、身体の軸を長く伸ばす意識を大切にします。
イメージとしては、頭のてっぺんから糸で吊られているように上に伸び、同時に足は床に向かって伸びていく感覚です。
この意識があると、背骨が自然に伸び、姿勢が良くなります。また、動きの中でも「縮こまる」のではなく「伸びながら動く」ことで、身体への負担が減り、動きの質が向上します。
エロンゲーションの意識は、立っている時も座っている時も、日常生活で常に応用できる概念です。
アーティキュレーション(Articulation):背骨を一本ずつ動かす「分節運動」
アーティキュレーションは、「分節」「関節を動かす」という意味の言葉です。ピラティスでは、背骨を一つひとつ順番に動かす動きを指します。
インストラクターが「背骨を真珠のネックレスのように」「一本ずつ床から離して」と言う時、このアーティキュレーションを求めています。
背骨は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の計24個の骨(椎骨)で構成されています。これらを一気に動かすのではなく、一つひとつ順番に動かすことで、背骨の柔軟性が高まり、可動域が広がります。
代表的なエクササイズとしては、「ロールアップ」や「ロールダウン」「ペルビックカール(ブリッジ)」などがあります。最初は難しく感じますが、練習を重ねるうちに背骨の動きが滑らかになっていきます。
パワーハウス(Powerhouse):胴体部分の安定
パワーハウスは、ピラティスの創始者ジョセフ・ピラティスが使った言葉で、身体の「動力源」となる胴体部分を指します。
具体的には、腹横筋、骨盤底筋群、多裂筋、横隔膜などを含む、肋骨の下から骨盤底までの「コア」と呼ばれる領域です。
パワーハウスが安定していると、手足を自由に動かしても身体の軸がブレません。逆に、パワーハウスが弱いと、手足を動かす時に腰が反ったり、身体がグラグラしたりします。
「スクープ」や「坐骨を寄せて」といった指示は、すべてこのパワーハウスを活性化させるためのものです。パワーハウスの安定は、ピラティスのあらゆる動きの土台となります。
ピラティス用語に関するよくある質問
指示通りに動こうとすると身体がつりそうになります
それは「頑張りすぎ」のサインかもしれません。ピラティスでは、100%の力で動く必要はありません。むしろ、60〜70%程度の力加減で、身体の感覚を味わいながら動くことが大切です。
「つりそう」と感じたら、一度力を抜いて呼吸を整えてみてください。また、インストラクターに伝えれば、動きを軽減する方法を教えてもらえます。
「肋骨を閉じて」と言われますが、苦しいです
「肋骨を閉じる」という指示は、肋骨が前や横に開きすぎている状態を修正するためのものです。特に反り腰の方は、肋骨が前に突き出やすい傾向があります。
苦しく感じる場合は、「締める」というより「肋骨の下の方を軽く内側に寄せる」くらいのイメージで大丈夫です。息を吐く時に自然と肋骨が閉じる感覚を利用すると、無理なく意識できます。
英語のレッスン動画で覚えるべき単語は?
海外のピラティス動画を見る際に知っておくと便利な単語をいくつかご紹介します。
- Inhale(インヘイル):息を吸う
- Exhale(エクセイル):息を吐く
- Neutral spine(ニュートラルスパイン):背骨の自然な位置
- Imprint(インプリント):腰を床に押し付けた状態
- Engage(エンゲージ):筋肉を活性化させる
- Lengthen(レングセン):伸ばす
- Curl(カール):丸める
これらの単語を押さえておけば、英語の動画でも動きの指示が理解しやすくなります。
意識することが多すぎてパニックになります
最初は誰でもそう感じます。呼吸、お腹、肩、骨盤……同時に意識することが多くて、頭がいっぱいになりますよね。
おすすめは、「一度に一つだけ」意識することです。今日のレッスンでは「呼吸だけ」に集中する。次のレッスンでは「お腹の引き込み」を意識する。そうやって一つずつ身体に染み込ませていくと、やがて意識しなくても自然にできるようになります。
焦らず、自分のペースで進めていきましょう。
マシンピラティスの専門用語はどこで学べますか?
マシンピラティスでは、リフォーマーの「キャリッジ(スライドする台)」「フットバー(足を置くバー)」「ストラップ(手や足を入れるベルト)」など、マシン特有の用語が出てきます。
これらの用語は、マシンの構造と一緒に理解すると分かりやすいです。マシンの種類や構造について詳しくは、別記事で解説しています。
まとめ|言葉のイメージが身体の動きを変える
ピラティスの用語や指示は、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、言葉の意味と身体の使い方がつながると、同じエクササイズでも効果が大きく変わります。
大切なのは、一度にすべてを完璧にしようとしないこと。一つひとつの言葉を、レッスンを重ねながら少しずつ身体に染み込ませていけば大丈夫です。
「お腹をえぐるように」と言われた時、「ああ、腹横筋を使うんだな」と分かるようになれば、もうあなたは立派なピラティス中級者です。
言葉のイメージが変われば、身体の動きが変わる。身体の動きが変われば、効果も変わる。ぜひ今日のレッスンから、一つでも意識してみてください。
