「ロールアップがどうしてもできない」「反動を使わないと起き上がれない」——ピラティスを始めた多くの方が、この壁にぶつかります。
ロールアップは、ピラティスの中でも代表的なエクササイズのひとつ。一見シンプルな「起き上がる動き」ですが、実は腹筋の筋力だけでなく、背骨の柔軟性やインナーマッスルのコントロールが求められる、奥の深い動きです。
この記事では、ロールアップができない原因を解説した上で、正しいやり方と段階的な練習法をご紹介します。「いつかできるようになりたい」と思っている方は、ぜひ参考にしてください。
- ロールアップができない3つの原因と自分のタイプの見分け方
- 腹筋運動とは違う、ロールアップの本当の目的
- 正しいロールアップの動き方とポイント
- 段階的にできるようになるための練習法
- 腰痛持ちの方が気をつけるべきこと
ロールアップとは?ピラティスの代表的なエクササイズ

まずは、ロールアップがどのような動きなのかを確認しておきましょう。
ロールアップの基本的な動き
ロールアップは、仰向けの状態から背骨を一つひとつ床から剥がすようにして起き上がり、前屈の姿勢になるエクササイズです。起き上がったら、今度は逆の順番で背骨を一つひとつ床に戻していきます。
動きの流れを簡単に説明すると、以下のようになります。
- 仰向けで両腕を頭上に伸ばす
- 息を吸いながら腕を天井方向に持ち上げる
- 息を吐きながら頭、首、肩、背中の順に床から剥がしていく
- 前屈の姿勢まで起き上がる
- 息を吸って背骨を伸ばし、吐きながら逆の順番で戻る
言葉にすると簡単そうですが、実際にやってみると「途中で止まってしまう」「反動をつけないと起き上がれない」という方がとても多いのです。
腹筋運動との違い|なぜピラティスで重視されるのか
「起き上がる動き」と聞くと、学校の体力テストでやった腹筋運動(クランチやシットアップ)を思い浮かべるかもしれません。しかし、ロールアップは一般的な腹筋運動とは目的が異なります。
腹筋運動は、主に腹直筋(いわゆる6パック)を鍛えることが目的です。勢いをつけて起き上がっても、腹筋に負荷がかかれば「トレーニングとしては成立」します。
一方、ロールアップは「背骨を一本ずつコントロールしながら動かす」ことが目的。腹筋の筋力だけでなく、背骨の柔軟性、インナーマッスルの使い方、呼吸との連動など、複合的な要素が求められます。
反動を使って起き上がれたとしても、それはロールアップの目的を達成したことにはなりません。だからこそ、多くの人が「できない」と感じるのです。
ロールアップができない3つの原因
ロールアップができない原因は、大きく分けて3つあります。自分がどのタイプに当てはまるかを確認してみてください。
原因①|背中(特に腰椎)が硬くて丸まれない
最も多い原因がこれです。ロールアップでは、背骨を一本ずつ「丸めていく」動きが必要になります。しかし、背中が硬いと背骨がひとかたまりになってしまい、滑らかに丸めることができません。
特に腰椎(腰の部分の背骨)が硬い方は要注意です。デスクワークで長時間座っている方、反り腰の傾向がある方は、腰椎の可動域が狭くなっていることが多いです。
背中が硬い方は、起き上がろうとすると「ある一点で止まってしまう」という感覚があるはず。これは、その部分の背骨が動いていないサインです。
原因②|腹筋の筋力不足、またはアウターマッスルの使いすぎ
腹筋の筋力が不足していると、重力に逆らって上体を持ち上げることができません。特に、仰向けから肩甲骨が床を離れるあたりが最も負荷がかかるポイントです。
ただし、「腹筋が弱いから」と思っている方の中には、実は筋力はあるのにうまく使えていないケースも多いです。
ロールアップでは、腹直筋(アウターマッスル)だけでなく、腹横筋や骨盤底筋群といったインナーマッスルを使う必要があります。アウターマッスルだけで起き上がろうとすると、首や肩に力が入ったり、途中で詰まったりしやすくなります。
原因③|足が浮いてしまう(カウンターバランスが取れない)
起き上がろうとすると足が浮いてしまう、という方もいます。これは、上半身を持ち上げる力に対して、下半身が「おもり」として機能していないことが原因です。
ロールアップでは、足を床に安定させておくことで、上半身を持ち上げるためのカウンターバランス(釣り合い)を取っています。足が浮いてしまうのは、体幹の安定性が不足しているか、動きのタイミングがずれている可能性があります。
また、股関節の前側(腸腰筋)が硬い方も、足が浮きやすい傾向があります。
ロールアップの真の目的を理解する
ロールアップができるようになるためには、この動きの「本当の目的」を理解しておくことが大切です。
背骨を一本ずつ動かす「アーティキュレーション」の練習
ロールアップの最大の目的は、背骨の「アーティキュレーション(分節運動)」を身につけることです。
背骨は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の計24個の骨が連なってできています。本来、それぞれの骨は独立して動くことができるのですが、現代人の多くは背骨がひとかたまりになって動いてしまっています。
ロールアップでは、この24個の骨を「一本ずつ床から剥がす」ようにして動かします。これによって、背骨の柔軟性と可動性を取り戻すことができるのです。
背骨が滑らかに動くようになると、姿勢改善、腰痛予防、日常動作の質の向上など、さまざまな恩恵があります。
6パック(腹直筋)ではなくインナーマッスルで起き上がる技術
ロールアップは、腹直筋(6パック)を鍛えるエクササイズではありません。むしろ、腹直筋に頼りすぎると、動きが硬くなり、途中で詰まりやすくなります。
本来のロールアップでは、腹横筋(お腹の深層にある筋肉)を使って体幹を安定させながら、背骨をしなやかに動かしていきます。この「インナーマッスルで起き上がる」感覚を身につけることが、ロールアップの醍醐味です。
最初は「インナーマッスルを使う」という感覚がつかみにくいかもしれません。後述する段階的な練習を通じて、少しずつ感覚を養っていきましょう。
正しいロールアップのやり方|動きのポイント
練習に入る前に、正しいロールアップの動き方を確認しておきましょう。
スタートポジションの作り方
仰向けになり、両脚をまっすぐ伸ばして床につけます。足は腰幅程度に開き、つま先は天井に向けます。両腕は頭上に伸ばし、肩の力は抜いておきます。
この時点で、腰と床の間に手のひら一枚分の隙間ができている状態(ニュートラルポジション)が理想です。腰が反りすぎている場合は、軽くお腹を引き込んで腰を床に近づけましょう。
呼吸と動きの連動
ピラティスでは、呼吸と動きを連動させることが基本です。ロールアップの場合は以下のように呼吸を使います。
起き上がる時
- 息を吸いながら両腕を天井方向に持ち上げる
- 息を吐きながら頭、首、肩の順に床から剥がしていく
- 吐く息を使いながら、背骨を一本ずつ起こしていく
戻る時
- 息を吸いながら背骨を伸ばす
- 息を吐きながら、おへそから遠いところ(腰椎)から順に床に戻していく
吐く息と共に「お腹をえぐる(スクープする)」意識を持つと、インナーマッスルが働きやすくなります。
「背骨を一本ずつ床から剥がす」イメージ
ロールアップで最も大切なイメージは、「背骨を一本ずつ床から剥がす」という感覚です。
よくある間違いは、首から「ガバッ」と起き上がろうとすること。これでは背骨の分節運動にならず、勢いをつけないと起き上がれません。
頭のてっぺんから順に、首の骨、胸の骨、腰の骨と、一つひとつゆっくりと床から離していきます。急がず、焦らず、「自分の背骨がどこまで動いているか」を感じながら行いましょう。
戻る時も同様です。腰から順に、一本ずつ床に下ろしていきます。「背骨が真珠のネックレスのように連なっている」というイメージを持つと、滑らかな動きがしやすくなります。
ロールアップができるようになるステップアップ練習
いきなりフルのロールアップに挑戦するのではなく、段階を踏んで練習することで、着実にできるようになります。
Step1|まずは「ロールダウン」から練習する
ロールアップができない方は、まず「ロールダウン(下りる動き)」から練習しましょう。起き上がるよりも、重力に逆らいながらゆっくり下りる方が難易度は低く、背骨の動きを感じやすいです。
やり方
- 長座(脚を伸ばして座る)の姿勢からスタート
- 両腕を前に伸ばし、息を吸う
- 息を吐きながら、おへそを引き込み、腰椎から順に床に下ろしていく
- 背骨を一本ずつ床につけていき、最後に頭と腕を下ろす
「ドスン」と倒れるのではなく、できるだけゆっくり、コントロールしながら下りることがポイントです。難しければ、膝を曲げた状態から始めても構いません。
Step2|膝を曲げて行う「アシスト・ロールアップ」
ロールダウンができるようになったら、膝を曲げた状態でロールアップに挑戦してみましょう。膝を曲げることで、腰への負担が軽減され、起き上がりやすくなります。
やり方
- 仰向けで膝を立てる(足は床につけたまま)
- 両腕を前に伸ばし、息を吸う
- 息を吐きながら、頭、首、肩の順に起こしていく
- 必要であれば、太ももの裏を手で持って起き上がりをサポートする
- 前屈の姿勢まで起きたら、ゆっくりとロールダウンで戻る
最初は太ももを持って起き上がっても大丈夫です。慣れてきたら、徐々に手の補助を減らしていきましょう。
Step3|タオルやセラバンドを使った補助トレーニング
足が浮いてしまう方や、途中で詰まってしまう方には、タオルやセラバンドを使った練習が効果的です。
やり方
- 仰向けになり、両足の裏にタオル(またはセラバンド)を引っ掛ける
- タオルの両端を両手で持つ
- 息を吐きながら、タオルを軽く引きながら起き上がる
- タオルの張力を使って、背骨を一本ずつ起こしていく
タオルを引くことで、起き上がりをサポートしながら、正しい動きのパターンを身体に覚えさせることができます。
Step4|フルロールアップへの挑戦
Step1〜3の練習を続けて、背骨の動きと腹筋のコントロールが身についてきたら、いよいよフルロールアップに挑戦です。
両脚を伸ばし、補助なしで起き上がってみましょう。最初は途中で止まってしまっても大丈夫です。「どこまで起き上がれたか」を確認しながら、少しずつ可動域を広げていきましょう。
焦らず、毎回「前回より少しでも進めたか」を意識して練習を続けることが大切です。
ロールアップに関するよくある質問
反動をつけて起きてもいいですか?
反動を使って起き上がるのはおすすめしません。ロールアップの目的は「背骨を一本ずつコントロールしながら動かす」こと。反動を使うと、背骨の分節運動ができず、腰に負担がかかるリスクもあります。反動を使わないと起き上がれない場合は、Step1〜3の練習に戻りましょう。
起きる時に腰がポキポキ鳴るのは大丈夫ですか?
痛みがなければ、基本的に問題ありません。背骨の関節が動く時に音が鳴ることはよくあります。ただし、痛みを伴う場合や、毎回同じ場所で大きな音がする場合は、インストラクターや専門家に相談することをおすすめします。
足の上に重りを置いてもらうのはありですか?
練習の段階では「あり」です。足を固定することでカウンターバランスが取りやすくなり、起き上がりの感覚をつかみやすくなります。ただし、これはあくまで補助。最終的には重りなしでできることを目指しましょう。また、足を固定することで腰に負担がかかりやすくなるため、腰痛持ちの方は避けた方が無難です。
毎日練習すればどれくらいでできますか?
個人差が大きいため一概には言えませんが、背骨の柔軟性とインナーマッスルの使い方が身につくまでには、通常数週間〜数ヶ月かかります。毎日練習する必要はありませんが、週に2〜3回、継続して取り組むことで着実に上達します。焦らず、自分の身体の変化を楽しみながら練習を続けてください。
腰痛持ちですがやっても平気ですか?
腰痛の種類や程度によります。軽い腰痛であれば、正しいフォームで行うロールアップは腰痛改善に役立つこともあります。ただし、急性の腰痛がある場合、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されている場合は、医師やインストラクターに相談してから行ってください。痛みが出たらすぐに中止し、無理をしないことが大切です。
まとめ|動きのコントロールこそがピラティスの真髄
ロールアップは、ピラティスの中でも「できるようになりたい」と思う方が多いエクササイズです。しかし、その難しさの裏には、ピラティスの本質が詰まっています。
ロールアップの目的は、単に「起き上がること」ではありません。背骨を一本ずつコントロールしながら動かす——この感覚を身につけることが、ピラティス全体の上達につながります。
できないからといって、反動を使ったり、無理に起き上がろうとしたりする必要はありません。段階的な練習を通じて、自分の身体の変化を感じながら取り組んでみてください。
ある日突然「あ、できた」という瞬間が訪れます。その時の喜びは、きっとピラティスを続けるモチベーションになるはずです。
