ピラティスのレッスンを受けていると、「呼吸を意識して」「中心から動かして」といった言葉をよく耳にしますよね。これらの言葉の背景には、ピラティスの「6つの原則」と呼ばれる基本的な考え方があります。
この記事では、ピラティスの6つの原則について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。原則を理解することで、普段のレッスンがより効果的になりますし、自宅での練習にも自信を持って取り組めるようになりますよ。
- ピラティスの6つの原則とは何か
- 各原則の意味と実践のポイント
- 原則を意識することで得られる効果
- 初心者が最初に意識すべき原則
ピラティスの6つの原則とは?
ピラティスには、エクササイズを行う上で大切にすべき6つの原則があります。「呼吸」「集中」「中心」「コントロール」「正確さ」「流れ」の6つです。
これらの原則は、単に体を動かすだけではなく、心と体を一体として鍛えるというピラティスの本質を表しています。ヨガやストレッチとは違う、ピラティスならではの効果を引き出すためには、この原則を意識することが欠かせません。
原則が生まれた背景
ピラティスは、1920年代にドイツ人のジョセフ・ピラティスによって考案されました。彼は幼少期に病弱だった経験から、体を鍛えることに強い関心を持ち、東洋と西洋の様々な身体鍛錬法を研究しました。
その結果生まれたのが、「コントロロジー」と呼ばれるメソッドです。コントロロジーとは、「体と心を自分の意志でコントロールする学問」という意味。ジョセフは単なる筋トレではなく、意識と動きを統合したトレーニングを目指していたのです。
ジョセフ・ピラティスと弟子たちの考え
実は、現在広く知られている「6つの原則」という形式は、ジョセフ本人がまとめたものではないと言われています。ジョセフの著書には原則という言葉は登場せず、弟子たちが師の教えを整理する中で、6つの原則としてまとめられたというのが通説です。
ただし、原則の内容自体はジョセフが繰り返し強調していた考え方ばかりです。形式は後世のものでも、その本質はジョセフ・ピラティスの哲学そのものと言えます。
ジョセフ・ピラティスの生涯やメソッド誕生の経緯について詳しく知りたい方は、別記事で紹介しているのであわせてご確認ください。
原則①|呼吸(Breathing)
6つの原則の中でも、最も基本となるのが呼吸です。ピラティスでは、すべての動きが呼吸とともに行われます。息を吸うタイミング、吐くタイミングが決まっていて、それに合わせて体を動かしていくのが特徴です。
なぜピラティスでは呼吸が重視されるのか
呼吸を意識することには、いくつかの理由があります。
まず、正しい呼吸は体幹の安定につながります。息を吐くときにお腹が自然と引き締まる感覚がありますよね。この働きを利用して、体の中心部を安定させながら動くことができるのです。
また、呼吸は心と体をつなぐ役割も果たしています。深い呼吸を続けることで、自律神経が整い、リラックスした状態でエクササイズに集中できます。逆に呼吸が浅くなると、体が緊張してしまい、本来の動きができなくなってしまいます。
胸式呼吸の基本的なやり方
ピラティスでは、主に「胸式呼吸」を用います。お腹を膨らませる腹式呼吸とは異なり、肋骨を横に広げるように息を吸い、肋骨を閉じるように息を吐く呼吸法です。
基本的なやり方は次の通りです。
まず、背筋を伸ばして座るか、仰向けに寝ます。両手を肋骨の横に添えてください。鼻から息を吸いながら、肋骨が左右に広がるのを感じます。このとき、肩が上がらないように注意しましょう。
次に、口から息を吐きながら、肋骨を中央に寄せるようにします。同時に、おへそを背骨に近づけるイメージでお腹を軽く引き締めます。
最初は慣れないかもしれませんが、繰り返すうちに自然とできるようになります。レッスン中に呼吸がわからなくなったら、まずは息を止めないことだけ意識してみてください。
胸式呼吸について詳しく解説した記事もありますので是非あわせてご覧ください。
原則②|集中(Concentration)
ピラティスは、「考えながら動く」エクササイズです。今どの筋肉を使っているのか、体がどんな状態にあるのかを常に意識しながら行います。これが集中の原則です。
「ながら運動」ではダメな理由
テレビを見ながら、音楽を聴きながらのエクササイズは、一般的なフィットネスでは珍しくありませんよね。しかし、ピラティスでは「ながら運動」はおすすめできません。
なぜなら、ピラティスの効果は意識と動きの統合から生まれるからです。漫然と体を動かしているだけでは、インナーマッスルへの刺激が弱くなり、期待した効果が得られにくくなります。
反対に、一つ一つの動きに集中することで、普段使われていない深層の筋肉にアプローチできます。同じエクササイズでも、意識の向け方次第で効果が大きく変わるのがピラティスの面白いところです。
レッスン中は、インストラクターの声や自分の体の感覚に意識を向けてみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、この集中力こそがピラティスの醍醐味でもあります。
「集中」することで得られるメリットについて記事にまとめましたのであわせてご覧ください。
原則③|中心(Centering)
ピラティスでは、すべての動きが体の中心から始まると考えます。この中心部分は「パワーハウス」と呼ばれ、ピラティスにおける最も重要な概念の一つです。
パワーハウスとは何か
パワーハウスとは、お腹周り、腰、骨盤底、お尻を含む体の中心部分を指します。肋骨の下から骨盤の底までの範囲をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
ピラティスでは、どんな動きをするときも、まずこのパワーハウスを安定させることから始めます。中心が安定していれば、手足を大きく動かしても体がぐらつきません。逆に中心が不安定だと、腰や首に余計な負担がかかってしまいます。
ジョセフ・ピラティスは、「パワーハウスは体のエネルギーセンターである」と表現しました。すべての力がここから発せられ、全身に伝わっていくというイメージです。
体幹との違い
「パワーハウス」と「体幹」は似た概念ですが、厳密には同じではありません。
体幹は一般的に、胴体部分全体を指す言葉として使われます。一方、パワーハウスはより限定的で、特にお腹の深層部、骨盤底筋、横隔膜などを含む機能的なユニットを意味します。
また、パワーハウスには「意識して活性化させる」というニュアンスが含まれています。ただ体幹があるというだけでなく、それを意識的にコントロールして使うという点が、ピラティスならではの考え方です。
レッスン中に「お腹を引き入れて」「中心を意識して」と言われたら、このパワーハウスを軽く引き締めることをイメージしてみてください。
原則④|コントロール(Control)
ジョセフ・ピラティスが自らのメソッドを「コントロロジー」と名付けたことからもわかるように、コントロールはピラティスの核心とも言える原則です。
ピラティスでは、勢いや反動を使わず、筋肉の力で動きをコントロールします。一つ一つの動作を自分の意志で制御しながら行うことで、狙った筋肉に正確に刺激を与えることができます。
ゆっくり動くことの意味
ピラティスのエクササイズを見ると、「動きがゆっくりだな」と感じる方も多いのではないでしょうか。これは、コントロールの原則を実践するためです。
速く動くと、どうしても勢いに頼ってしまいます。勢いで動いた分は筋肉への負荷が減り、効果が薄れてしまいます。また、関節や腱に余計な負担がかかり、怪我のリスクも高まります。
反対に、ゆっくりと動きをコントロールすることで、筋肉は常に緊張状態を保ちます。これが、ピラティス特有の「効いている」感覚につながります。
特に動きの切り返し部分が重要です。例えば足を上げて下ろすとき、下ろす瞬間に力を抜いてストンと落としてしまう人は少なくありません。この下ろす動作こそ、コントロールの見せ所です。重力に逆らいながらゆっくり戻すことで、筋肉を最大限に使うことができます。
原則⑤|正確さ(Precision)
ピラティスでは、回数をこなすことよりも、一回一回の動きを正確に行うことを重視します。これが正確さの原則です。
回数より質を重視する考え方
一般的な筋トレでは、「10回3セット」のように回数で負荷を管理することが多いですよね。(もちろんフォームも重要ですが。)それに対して、ピラティスでは回数はあくまで目安であり、最も大切なのは動きの質です。
フォームが崩れたまま回数を重ねても、狙った筋肉には効きませんし、怪我の原因にもなります。10回を雑にやるよりも、5回を丁寧にやる方が効果的というのがピラティスの考え方です。
ジョセフ・ピラティスの有名な言葉に「10回で気分が良くなり、20回で見た目が変わり、30回ですべてが変わる」というものがあります。これは単に回数を重ねればいいという意味ではなく、正確な動きを積み重ねていくことの大切さを説いた言葉です。
正確さを追求するためには、まず自分の体の状態を知ることが必要です。鏡を見ながら練習したり、インストラクターにフォームをチェックしてもらったりすることをおすすめします。最初は完璧を目指さなくても大丈夫です。少しずつ精度を高めていく過程そのものが、ピラティスの上達につながります。
原則⑥|流れ(Flow)
6つの原則の最後は流れです。ピラティスでは、一つ一つのエクササイズを流れるように連続して行うことを理想とします。
動きをつなげることで得られる効果
ピラティスのエクササイズには決まった順序があり、それぞれの動きが自然に次の動きへとつながるように設計されています。この流れを意識することで、いくつかの効果が得られます。
まず、体が温まった状態を維持できます。動きと動きの間で長く休んでしまうと、筋肉が冷えてしまい、次の動作の効率が落ちてしまいます。流れを保つことで、心拍数も適度に上がり、有酸素的な効果も期待できます。
また、流れを意識することで、集中力が途切れにくくなります。一連の動きを川の流れのようにイメージしながら行うと、動きの途中で気が散りにくく、レッスン全体を通して質の高い時間を過ごせます。
ただし、初心者のうちは流れを意識しすぎる必要はありません。最初は一つ一つの動きを丁寧に覚えることが大切です。基本が身についてくると、自然と動きがなめらかにつながるようになっていきます。
6つの原則を意識するとピラティスはどう変わる?
ここまで6つの原則を解説してきましたが、「全部を意識するのは難しそう」と感じた方もいるかもしれませんね。確かに、すべてを完璧に実践するのは簡単ではありません。
でも、安心してください。6つの原則は、一度にすべてを意識する必要はありません。まずは呼吸だけ、次は中心だけ、というように一つずつ取り入れていけば大丈夫です。
実際に原則を意識し始めると、同じエクササイズでも効き方が変わってきます。「今まで使えていなかった筋肉が動いている」「レッスン後の疲労感が心地よい」といった変化を感じる方も多いです。
また、原則を理解していると、自宅で練習するときにも迷いがなくなります。動画を見てなんとなく真似するのではなく、「今は呼吸を意識しよう」「中心から動かそう」と自分で意識を向けられるようになるからです。
ピラティスの効果を最大限に引き出したいなら、6つの原則は知っておいて損はありません。焦らず、一つずつ自分のものにしていきましょう。
ピラティスの原則に関するよくある質問
6つの原則は順番に意識すべきですか?
順番に意識する必要はありません。6つの原則に優劣はなく、どれも等しく重要です。ただし、実際のレッスンでは「まず呼吸を整えて、中心を安定させてから動く」という流れになることが多いので、呼吸と中心は最初に意識しやすい原則と言えます。自分が苦手だと感じるものから取り組んでみるのも一つの方法です。
初心者はどの原則から始めるのがおすすめですか?
初心者の方には、まず呼吸から意識してみることをおすすめします。呼吸はすべての動きの基盤になりますし、意識しやすい原則でもあります。息を止めないこと、動きに合わせて呼吸することを心がけるだけでも、エクササイズの質が変わってきます。慣れてきたら、次に中心(パワーハウス)を意識してみてください。
原則を意識しないとピラティスの効果はないですか?
効果がまったくないわけではありませんが、原則を意識することで効果は大きく高まります。ピラティスは「意識」と「動き」を統合するエクササイズなので、漫然と体を動かすだけでは本来の効果を得にくいです。逆に言えば、原則を意識するだけで、同じ時間、同じエクササイズでもより多くの効果を引き出せるということです。
ヨガの考え方とピラティスの原則は似ていますか?
共通する部分はあります。呼吸を重視すること、心と体のつながりを大切にすること、集中力を高めることなどは、ヨガとピラティスに共通する考え方です。実際、ジョセフ・ピラティスはヨガを含む東洋の思想からも影響を受けたと言われています。ただし、ピラティスは体幹の安定やコントロールをより重視する点で、ヨガとは異なるアプローチを取っています。
流派によって原則の内容は違いますか?
基本的な6つの原則は、多くの流派で共通して採用されています。ただし、流派によっては原則の数や表現が異なる場合があります。例えば、8つの原則を掲げる流派もありますし、原則の名称が微妙に違うこともあります。しかし、根本にある考え方は共通しているので、どの流派でも原則の本質は同じといえます。
まとめ|原則を知ることがピラティス上達の第一歩
ピラティスの6つの原則について解説してきました。
- 呼吸(Breathing)
- 集中(Concentration)
- 中心(Centering)
- コントロール(Control)
- 正確さ(Precision)
- 流れ(Flow)
これらの原則は、ピラティスを単なるエクササイズではなく、心と体を鍛えるメソッドにしている要素です。すべてを一度に完璧にする必要はありませんが、少しずつ意識に取り入れていくことで、ピラティスの効果をより実感できるようになります。
次のレッスンでは、ぜひ今日学んだ原則のどれか一つを意識してみてください。きっと、いつもと違う感覚を味わえるはずです。

